青空の下の机

旅をして、写真を撮って、生まれた想いを小説に籠める。

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超能力、売ります、買います。(6)

 *****

 最初の発見者はある自警団だ。
 ここら辺はお世辞にも治安が良いとは言えず、夜遅くに出掛けるのは自殺行為と同等だ。警察だけでは手に負えず、平和を守るという名目で数年前に別の組織が結成された。自分たちがちゃんと機能していない以上、市民の不満を買えない警察も暗黙のうちにその立ち上げを認めている。
正義感溢れるお方がその団体に志願し、数人グループで街を徘徊する。
 ちなみに、その組織にも色々噂が飛び交っているが、今回は割愛しよう。

 十月、上弦の月の夜だった。
 廃工場地帯。もう数十年も稼働していない工場は錆びが生じ、今にも崩壊しそうだ。寂れ街灯も少ないここは、まさに犯罪の温床。自警団はそのような場所を活動の拠点としている。
その晩は珍しく何の事件も起こらず、辺りは秋の虫の音と彼らの足音が響く。

 一人があるものに気付く。
工場のタンクの上、大きな物体がもぞもぞと動いていた。
 正体不明の何かに皆が注目する。
 すると、黒い塊から何か丸い物が転がり落ちた。
不審に思った彼らは懐中電灯で雑草まみれの地面を照らし、工場の敷地内へと走り出す。
その正体を暴くために。

 何かを見つけ、悲鳴を上げる。

 首だ。
 髪の長い女性の首が、足元に転がっていた。
 頬の肉は引き裂かれ、口が大きく見える。髪はべったりと濡れていて、片目は抉りだされ節穴となっていた。
 それが、一つだけではなかった。
 老若男女、さらに犬猫の動物を問わず、自警団の周りから、次々と頭部が発見された。
 流石の彼らもざわめき始める。
 しかし一番の問題がまだ残っている。
 タンクの上には、何かがいる。
 その人たちは恐る恐る上を見上げた。
 そこには半分の月の光により映し出された、三つ又の首を持つ犬の影。
じっと、こちらを見ていた。



続く
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  1. 2013/01/17(木) 20:41:01|
  2. ┣超能力、売ります、買います。
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超能力、売ります、買います。(5)

 まさか、実際に遭遇してしまうとは。

 一度は消え去った焦りもすぐ戻り、心臓が高鳴る。外に出ろ、外に出ろと脳から何度も指令が来る。
 すぐさま踵を返し、入り口へと脱兎の如く走り出した。
 最悪なことにゲーセンは入り組んだ構造をしていて、そしてここはそんな場所のかなり奥だ。すぐには出られない。
 しかし、俺には分かっていた。
 この状況が何を示唆するのか。
 だからこそ、余計に走ることに専念しなければならない。

 あまりに集中していたのか、出口が見えるまでは一瞬の出来事のようだった。黒く塗装された自動ドアを発見した時は、思わず安堵の息が漏れる。
 残り、数十メートル。早く出なければならない。
 気力を振り絞り、残った力を足に注いだ。

 頭がようやく回り始める。
 このことが、本当のことなら。
 これが、現実なら。

 超常現象は、実在する


 目の前を何かが横切る。
 ぶつかる――
 物体に気付いた時にはもう目の前に。勢いよく頭をぶつけ、俺は後方へ倒れ込んだ。
「痛!」
 頭を強く打ったせいか、視界が酷く歪む。
 それでも、ぶつかってしまったのが何なのか。確認くらいはできた。

 人間だった。
 相手も、尻もちをついていた。だが痛がっている様子もなく、むしろ俺を見て驚いているようだ。
「――何で人がいるんだ」
「はい?」
 心外な言葉で、思わず聞き返した。
「いや、何でって――こっちが聞きたいよ。何でアンタだけがいるんだ、周りの人がいないのは何でだ?」
「質問には答えない。早く外に出なさい。さっきまでいた人たちは大丈夫だから」
 やけに淡々とした口調だ。
 まあ、言われなくとも元からそうしようと考えていたので、大人しくこの人の指示に従おう。

 その時だった。
 轟々と地が鳴り響き、細かく揺れ、どこか遠くからか爆発音が聞こえる。
 それは段々と大きくなり、振動は衝撃に、音は騒音へと変貌していく。
 既に何台かのUFOキャッチャーは耐えきれず横転し、中の景品がこぼれだす。天井からは砂煙が舞い降りてくる。
「あー、畜生。間に合わなかったか」
 こんな状況の中でも目の前の人物は冷静だ。
 どちらかというとどこか緊張した素振りだった。
「なあ、少年」
 こっちを振り向かずに問いかけてきた。
「『未確認生物』って信じるか?」
 全く脈絡のない質問に思わず呆気にとられた。
「UMA……まあ、それなりに」
 そう答えると鼻で笑われた。
「ならよかったな。今から、その一つに会えるぞ」
「は? うわっ!」
 地響きは最早その言葉では形容できないほどに莫大になり、数メートル先の床には亀裂が入っていた。コンクリートが打ち砕かれる不快な音が連なる。立っていられるのがやっとのことだ。
 地面が徐々に盛り上がり、山をつくりだす。そしてある高さになると、瓦礫の塊が次々と、それの背中から雪崩れゆく。

 二、三メートル位だろうか。見上げるくらいだから、俺らの背丈はゆうに超えている。
 重機のエンジン音のように呻り、その冷たく鋭い眼光をすべて俺らに向けていた。
 砂煙が落ち着き始め、視界がだんだんとよくなる。

――それは獣だ。大きな犬だ。

 だが、動物園やご近所で見かける可愛らしい物なんかではない。
「いいか、何があってももう外に出る様な真似はするな。隅で小さくなってろ」


 三つの首の犬はおぞましく咆哮した。



続く
  1. 2013/01/15(火) 22:42:03|
  2. ┣超能力、売ります、買います。
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超能力、売ります、買います。(4)

 これは不覚だった。こんなベタな罠にかかるなんて。
 今の俺は、尻を出した状態で、ただ嘆くだけだ。しかも最悪なことに、辺りを見渡しても予備のトイレットペーパーらしきものも見当たらない。助けを求めようとしても、人はいない。もちろん非常ボタンというものもない。
 まだだ。まだ慌てる時ではない。
 そう自分に言い聞かせて、心を平静に保った。しかし、そう長くはもたないようだ。
 俺はこの状況をどうしたら打破できるかあれこれ模索したが、どれもすぐ暗中に落ち行く。
 自分でも顔がどんどん青ざめていくのが分かる。
 今の俺は絶望的だ。
 神様に頼んだって、紙が降臨するはずもない。ついでに、洒落でもなんでもない。
 今日、何度目かのため息を吐いた。そのまま、吐き出した分の空気を深く吸い込み、決心した。

 人間、やめよう。

 俺は拭くのを諦めた。すっきりとした心持で、便座からお尻を浮かせた。
「…………あ」
 俺は立ち上がった光景に開いた口がふさがらなかった。
 よく探し物をするときに、親から「視点を変えなさい」と言われたことがある。それは、単なる比喩表現であって、そのままの意味ではない。
 と、この瞬間まで考えていた。
 立って手を伸ばせば届くところに、小さな棚がある。
 そして、そこにはずっと探していた物が、何ロールも、丁寧に並べられている。

 紙様。……もとい、神様。
 ありがとう。


 なんて、茶番をやっている暇はなく、俺は手を洗ってすぐにカズヤの元へ戻った。というのも、あまりにもトイレ長すぎると、
「大やったんか? でかかったんか?」
 と、あまりにもデリカシーのない質問の連発を大声で食らうので。
 まあ、もう手遅れな気もするが……
 そんなことを考えながら、あいつが遊んでいたゲーム台にたどり着いた。
「はあ……。あいつどこ行きやがった」
 ご丁寧にコントローラーは指定位置に戻され、画面はゲームオーバーの文字が中央に浮かび上がった。
 他の誰かがプレイしていた可能性もあるが、この状況から考えると、まだ遠くには行ってなさそうだ。
 ……というか、これではまるで急に消えたみたいだ。

 …………?
 ……………………。
 もともと騒がしい空間だからか、それとも周りをよく見ていなかったからか、違和感に全く気付かなかった。
 人々が煙にでもなったかのように、誰一人いない。
 ただ、使用中のゲームがいたるところにあった。
 娯楽を楽しみにやって来たのに、途中で放棄するなんてありえない。

 嫌な予感がする。
 嫌な予感しかしない。



続く
  1. 2013/01/09(水) 18:37:40|
  2. ┣超能力、売ります、買います。
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超能力、売ります、買います。(3)

 薄暗い中、赤や黄など様々な光が閃いて部屋の中を飛び交っている。青春を謳歌している学校帰りの学生の集団から、何時間もそのゲーム台に居座っていそうな猛者まで。たくさんの人が娯楽の一時を過ごしている。
 俺はどうしてもこの環境に馴染めない。別にゲームが嫌いなわけではない。雑音という雑音がそこら中から響き渡り、狭い通路に人が密集する。独特の雰囲気がどこか犯罪を引き起こしそうで、お世辞にも落ち着ける空間とは言えない。
 カズヤはゲーセンに到着すると同時に走りだし、姿を消した。
 どうやら、俺は必要なかったようだ。
 ……何で連れてきたんだ?
 疲労が一気に駆け巡り、頭に手をあてため息を吐いた。
 仕方ない。俺も遊ぼう。
 フラフラしながらもゲーセンのさらに奥へ入った。
 カズヤを見つけるのには、そう時間は掛からなかった。あいつはいつも最初にシューティングゲームをしないと、気が済まないのだ。そしてここにその類いのものは一つだけ。案の定、カズヤはすでに始めていて、銃型のコントローラーを画面に向けて、次々に映し出されるゾンビに風穴を空けていた。
「なあ、俺が来る意味あったか?」
「うーん、ないね」
 即答かよ。視線もこちらに向けず、彼はただ俺の言葉を受け流している。
「じゃあ何で連れてきたんだよ」
「まぁまぁ、そう怒るなや。リョウタも何かして日頃のストレス解消しときな」
「誰がそのストレスを生みだしてんだよ。……まぁいいや。トイレ行ってくるから、もしそれが終わってもあまり動き回るなよ」
「へいへい、行っトイ……」
 カズヤの茶番を聞き終わる前に、すでに俺はその場から離れていた。

 何ということだ。
 ゲームセンターのトイレというものは、まるで別世界だ。あれほど鼓膜を破ろうとしていた騒音もなくなり、一面真っ白で少しひんやりとした空気。あまりに対照的だからよりこの場の殺風景さが引きだっている。
 だがそんなこと、今はどうだっていい。

 紙が、ない。



続く
  1. 2012/12/24(月) 16:52:15|
  2. ┣超能力、売ります、買います。
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超能力、売ります、買います。(2)

「昨日のアレ、見た?」
「あー……。またカズヤが馬鹿やらかしてその処理してたから、途中までな」
「ご愁傷様」
 下校中、俺は隣のクラスのユリサに声をかけられ、一緒に帰ることになった。とは言っても、俺の寮は徒歩圏内で彼女は電車通学だからすぐに別れることになるが。
 ユリサもまた無類のSF好きで、あの番組を「アレ」と称するほど、俺とその話しかしない。
「結局どんなんだったんだ?」
「大雑把にいうと『超能力は誰でも手に入る』って内容だった」
「そこまでは知ってる。その後……方法とかは言ってたか?」
「んー、超能力はどんなものがあるのか紹介してただけ。方法とかは不明だって。今回も抽象的だったし、単なる都市伝説じゃない?」
「なんだよ……夢がないな」
 所詮、噂話なのは重々承知していたが、いざこいつに存在を否定されると一気に肩の力が抜ける。項垂れながら、歩いていた。
「まあまあ。あ、でも最後にはこんなこと言ってた」
「……何?」
 俺は視線だけをユリサに向けた。
「『この説の通りだといつか超能力がビジネスになる』だって」
「どういうことだ?」
「つまりは整形手術みたいな感じね。外見を理想に近づけるのと同様に、自分のアビリティをいじることが出来るのよ。お金さえ払えればね」
「なるほどな。どうせそれが実現したとしても大金だろうから、俺たちにとっては夢の話なんだろうな。……お、そろそろ寮だ。じゃあな」
 T字路で俺は右、彼女は駅のある左へと向かった。
 黄金色に太陽は辺りの景色を染め、雲は橙と紫が入り混じる。春のそよ風が顔をなでる。少しひんやりしてて気持ちいい。
 明日は日曜日。こんな安らぐ環境で、ゆっくりしていたいが……
「おいリョウタ、ゲーセン行くぞ!」

 生憎、今の俺にはそんな場所、どこにも無い様だ。



続く
  1. 2012/12/23(日) 18:00:20|
  2. ┣超能力、売ります、買います。
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矢口鳥居

Author:矢口鳥居
愉快な、
不快な、
爽快な、
痛快な、
欣快な……
そんなお話がここにあります。
多分。

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