青空の下の机

旅をして、写真を撮って、生まれた想いを小説に籠める。

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超能力、売ります、買います。(5)

 まさか、実際に遭遇してしまうとは。

 一度は消え去った焦りもすぐ戻り、心臓が高鳴る。外に出ろ、外に出ろと脳から何度も指令が来る。
 すぐさま踵を返し、入り口へと脱兎の如く走り出した。
 最悪なことにゲーセンは入り組んだ構造をしていて、そしてここはそんな場所のかなり奥だ。すぐには出られない。
 しかし、俺には分かっていた。
 この状況が何を示唆するのか。
 だからこそ、余計に走ることに専念しなければならない。

 あまりに集中していたのか、出口が見えるまでは一瞬の出来事のようだった。黒く塗装された自動ドアを発見した時は、思わず安堵の息が漏れる。
 残り、数十メートル。早く出なければならない。
 気力を振り絞り、残った力を足に注いだ。

 頭がようやく回り始める。
 このことが、本当のことなら。
 これが、現実なら。

 超常現象は、実在する


 目の前を何かが横切る。
 ぶつかる――
 物体に気付いた時にはもう目の前に。勢いよく頭をぶつけ、俺は後方へ倒れ込んだ。
「痛!」
 頭を強く打ったせいか、視界が酷く歪む。
 それでも、ぶつかってしまったのが何なのか。確認くらいはできた。

 人間だった。
 相手も、尻もちをついていた。だが痛がっている様子もなく、むしろ俺を見て驚いているようだ。
「――何で人がいるんだ」
「はい?」
 心外な言葉で、思わず聞き返した。
「いや、何でって――こっちが聞きたいよ。何でアンタだけがいるんだ、周りの人がいないのは何でだ?」
「質問には答えない。早く外に出なさい。さっきまでいた人たちは大丈夫だから」
 やけに淡々とした口調だ。
 まあ、言われなくとも元からそうしようと考えていたので、大人しくこの人の指示に従おう。

 その時だった。
 轟々と地が鳴り響き、細かく揺れ、どこか遠くからか爆発音が聞こえる。
 それは段々と大きくなり、振動は衝撃に、音は騒音へと変貌していく。
 既に何台かのUFOキャッチャーは耐えきれず横転し、中の景品がこぼれだす。天井からは砂煙が舞い降りてくる。
「あー、畜生。間に合わなかったか」
 こんな状況の中でも目の前の人物は冷静だ。
 どちらかというとどこか緊張した素振りだった。
「なあ、少年」
 こっちを振り向かずに問いかけてきた。
「『未確認生物』って信じるか?」
 全く脈絡のない質問に思わず呆気にとられた。
「UMA……まあ、それなりに」
 そう答えると鼻で笑われた。
「ならよかったな。今から、その一つに会えるぞ」
「は? うわっ!」
 地響きは最早その言葉では形容できないほどに莫大になり、数メートル先の床には亀裂が入っていた。コンクリートが打ち砕かれる不快な音が連なる。立っていられるのがやっとのことだ。
 地面が徐々に盛り上がり、山をつくりだす。そしてある高さになると、瓦礫の塊が次々と、それの背中から雪崩れゆく。

 二、三メートル位だろうか。見上げるくらいだから、俺らの背丈はゆうに超えている。
 重機のエンジン音のように呻り、その冷たく鋭い眼光をすべて俺らに向けていた。
 砂煙が落ち着き始め、視界がだんだんとよくなる。

――それは獣だ。大きな犬だ。

 だが、動物園やご近所で見かける可愛らしい物なんかではない。
「いいか、何があってももう外に出る様な真似はするな。隅で小さくなってろ」


 三つの首の犬はおぞましく咆哮した。



続く
  1. 2013/01/15(火) 22:42:03|
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