青空の下の机

旅をして、写真を撮って、生まれた想いを小説に籠める。

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掌編小説:戦車の置物

 あの時は中学三年生、受験を目前に控えた日のことだった。
 僕と友達は卒業旅行(学校のプログラムでそういう呼び名になっている)で遊園地に来ていた。田舎者の僕たちにとってはこの上ない贅沢な遊び場だ。
 遠くを見渡せられる大きな観覧車に乗ってもいい、目まぐるしく疾走するジェットコースターに乗ってもいい、ちょっとお子様な気もするけど華やかなメリーゴーランドも悪くはない。だけど、僕たちは。
「なんで遊園地に来てまでゲームすんの……」
 アーケードのゲームセンターにいた。
 そこは近所にあるゲームセンターと同じゲームが並んでいて、馴染みがあるといえば聞こえがいいが、折角の遊園地が台無しだ。
 なぜ僕たちがここにいるのか、理由はいたって簡単。
 観覧車は高所恐怖症だから。ジェットコースターは絶叫マシーンが苦手から。メリーゴーランドは子供っぽくて恥ずかしいから。
 友人各々がそれぞれ理由があるため、皆で楽しめるのはこの場所くらいだった。
「ええやん。そんなことよりこれで遊ぼうやー」
 一人の友人が指差したのは、某ロボット格闘ゲームだった。一台だけポツンと設置されている。
「これって一人用じゃん」
「細かいことはええねん。わいはこれするで」
 ここへ来た理由は何だっけ? そう思い返してしまうほどのソロプレイを彼は発揮する。
 三年間の付き合いだからこそ、ため息一つで済まされるが、もしこれが初めての旅行ならこの友人とは縁がなかっただろう。
 一人が格闘ゲームに夢中になっている間、僕たちは彼の傍観をしていた。

 観戦も飽きて、ふと見ると、奥に射的ゲームがあった。大分古びていて、誰も寄りつこうとさえしないそのゲーム機に僕は興味をそそられた。
 景品とベルトはティッシュで繋げられていて、ベルトが動くことで右から左へ移動している。いかにも昔のゲームといった雰囲気を漂わせていた。
 それでも尚僕がそのゲーム機に魅かれたかというと、景品に戦車の置物があったからだ。当時戦車が好きだった僕にとって欲しいものだった。
 さっそく百円を入れて、銃を構える。ティッシュの部分を弾で破く。という簡単なことなのだが、ティッシュは何枚折にもされていて、そう簡単に破れなかった。
 百円、また百円と、次々にお金を投入するが、当たらなかったり、しぶとくぶら下がっていたりと、なかなかゲットできずにいた。
 おまけに、友達が途中から参戦して、いわゆる『横取り』を企てた。
 その時から、焦りとともに、闘争心のような、そして自分の手でこの景品を手に入れなければいけないんだという気持ちが湧き上がってきた。景品を繋ぐティッシュは、もう糸のように細かった。ここまで行けたならいくらお金をかけてでも手に入れたいものだけど、生憎手持ちのお金はあまり残っていなかった。残りの一発にかけるしか僕には手だてがない。
 友達がからかい半分に景品を狙っていることを無視して、集中して狙った。標準を合わせて、ベルトによる動きも計算しておく。
 そして、ぶれないように引き金を、引いた。

 一瞬何があったのか分からなかった。
 ただ、『ガコン』という音がゲーム機から響いた。
 足元を見るとそこには、さっきまで狙っていたものがあった。
 戦車の置物だ。
「やったやん。これも僕たちのおかげやな」
「何でだよ。あんたたち横取りしようとしてただけやん」
「そうすることによって闘争心に火を点けさせようとしたんよ」
 意味も分からない、他愛のない会話をしながら、僕たちはほくそ笑んだ。もしかしたら実際には微笑んでたのかもしれない。
 僕は景品を手に取った。ずっしりと大きな重みが手に伝わる。
「さて、もう集合時間やし、帰りますか」
「そやな。あーあ、帰ったら受験勉強かー」
「それ、禁句―」

 あれから、数か月後、僕たちは高校受験を受けた。友達は全員、第一志望を合格した。
 僕は落ちた。全然悔しくなかったと言うと、全くの嘘になる。
 だけど、これでよかったのだと、高校三年間を過ごして思った。
 僕の第一志望は県外の進学校だった。おそらくそちらの方が受かっていたならば、もう二度とその友人たちとは会うこともなかっただろう。
 滑り止めの県内の高校に入学したおかげで、いつまでも友人たちの近くにいた、気軽に遊ぶことができ、好きな時に会うこともできた。
 共にカラオケに行った。共に食事をした。偶には悪ふざけもした。楽しい日々だった。
 だけど、この友人たちとはもうすぐお別れ。今度こそ第一志望の大学を受かることができ、僕は一人、遠い地へ旅立ってしまう。
 これからどうなることか。僕にも分からない。
 ただ、これからも彼らとの連絡は絶やさないでおこうと思う。

 棚に飾っていた戦車の置物は、大分ほこりを被っていた。手に取ると、ずっしりと重みが伝わる。
 置いていたところだけほこりがなく、くっきりと跡が残っていた。
 僕は戦車についたほこりを手で払うと、引っ越し用の段ボールの中にそっと入れた。




以下、あとがき
青春って何者だったのでしょうか。

恋愛、部活、勉強……。

私が思い返すに、青春とは特に今までと変わりはなかったです。

ただ、友達とバカみたいなことをして、笑って、楽しんでいた。

短い人生なので、こんなことを語るのは愚かですが、

青春とは名前だけ。

つまりは気の持ちようだけなのでは……?

私の過去を振り返るたび、そう感じてしまいます。
  1. 2014/02/25(火) 10:11:09|
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