青空の下の机

旅をして、写真を撮って、生まれた想いを小説に籠める。

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掌編小説:バカはセックスをするな(R18)

 俺は二十二歳。童貞である。

 ……いやいや好きでそうなったわけではない。
 顔は悪くないし、異性に興味がないわけでも、女子と全く接点がなかったわけではない。むしろ滅茶苦茶ヤりたいし。その気になれば彼女も作れた……のかもしれない。
 ともかく俺が童貞なのは、断じて俺のせいなんかではない。社会が悪いんだ。
「異性間性行為許可証」という代物を手に入れない限り、俺はヤるとご法度となる。

 俺が異性に関心を抱きはじめた、十四の春。突如件の法律が制定された。
 それは「人類がより高等な知性を有し、人類進化と社会発展を形成する」……だとか、そんな名目のために定められた。
「頭のいい」政治は、人類は万物の霊長たる知性を持つのに相応しい生物であり、悪い頭脳を後世に残してはいけないという。そして許可証をもたない者に子孫を残すことを規制した。
 要するに「バカはセックスをするな」という意味だ。理解力のない俺でもそれくらいはすぐに分かった。
 市民権だとか差別問題だとか倫理問題だとか、各地でデモ運動を行う様子はニュースで多々見受けられた。
 だが、喚きたてることしか脳のない阿呆は、いわゆる「知性派」にことごとく論破されて、屈した。
 双方が許可証を持たない者の性行為は違法。
 避妊したとしても違法。
 本番しなくても違法。
 隠れてこっそりやっても違法。
 どこでどう監視しているのか。遅かれ早かれ発覚して、違反通告を受ける。
 通告を受けた者は多額の罰金を支払うわけでも、豚箱にもぶち込まれることもない。
 その代わり問答無用で去勢される。
 性的に、処刑される。
 強制的に永遠にセックスができない身体へ仕立てられる。
 そんなのは誰だってご勘弁だ。

 法が施行されて以来、全青少年は十八になると適正試験を受験しなければならない。それに合格した者のみが性行為を許されることになる。
 その試験がまた難しいったらありゃしない……。内容は大学受験のそれと、さほど変わらない。合格率は男女合わせてわずか二〇パーセント。男女別でいえば女性が六二パーセントに対し男性が三八パーセント。
 ちなみにAV女優・男優は、医者や弁護士に次ぐエリート職業になった。
 おまけに二度目以降の再受験には、二万円近く払わないといけないときた。
 裕福でない家庭に生まれ育った俺には迂闊に失敗できない。このシステムで政府の財布は潤沢だそうだが、四度目の不合格通知を受けた俺の貯金はもう底を尽きようとしていた。
 試験に手ごたえもあって、「今度こそ……!」、と内心期待していた俺は通達を見て落胆した。
 そんな……。
 大学の勉強を休んで、試験対策に講座に二年も通ったのに……。
 畜生、これじゃあ月四万円払って通っていた大金が水の泡じゃないか。
 許可証が手に入らない人の救済措置に、風俗店だけは許可証なしでも利用が可能だそうだが、そんな人間の下心につけこんで、風俗店は軒並み高騰した。
 まだお金に余裕があったときは風俗で童貞を捨てるものかと意地をはっていたが、今となっては風俗に通う金もない。
 あー、何が人類の進化のためだ。悪い頭脳を残してはならんだ。どうせ一握りの頭がいい奴らはエロゲみたいな社会で人生を謳歌してるんだろ。俺にもさせろよ。知性派って「性行為を知る派閥」のことなんだろ。
 この恥性派め!

 矛先のない怒りで我を失っていたところに一本の電話がきた。宛先をみると友人のYからだった。
 Yは俺と同じ試験に落ち続けた童貞だ。大学で知り合った同志にすっかり心を開き、俺にとってYはかけがいのない親友となった。一度童貞卒業の夢を諦めかけていた俺を慰め、「一緒に合格しような」と励ましてくれた。
 そういえば、Yの方はどうなったのだろうか。まあ自信のあった俺が落ちたくらいだから、Yもきっと落ちているだろう。
 アイツも相当落ち込んでいるはずだ。
 あの時Yにされたように、俺もYの事を励ましてやろう。
「もしもし、Y。今回は残念だったがまた来年も――」
『もしもし⁉ 俺、受かった! もうダメだと思ってあてずっぽうに記入したんだけど意外に勘が冴えてたみたいでさ。ようやく俺も脱童貞の道を進めるぜ! お前、この間自信あるって言ってたから受かってるよな? 今夜飲んで騒ごうぜ! あ、まずは渋谷にでもいって手当たり次第にナンパして――。……って、おーい。もしもしー聞こえてるかー?』
 俺はそっと電話を切った。

 なんてこった……。俺だけ取り残されてしまった。まるでマラソンで「一緒に走ろうね」って言われたのに裏切られて走り去られた気分だ。落ちたのは自業自得だし、同志が成功したのはいいことだが、素直に喜ぶことができない。
 くそっ、くそ……。なんか無性に腹が立ってきた。同志だと思っていたのに、裏切られた途端にアイツの泣きじゃくって悔しむ姿を拝みたくなってきた。
 こんな時は気晴らしにお気に入りのAVでも観賞して――

 ……はあ。射精したらなんか虚しくなってきた。
 DVDを取り出す事後処理の最中も、俺の頭の中はエロでいっぱいだった。
 何が何でも生で女の裸が見たい。こんなパッケージに印刷された加工物なんかより、本物の質感を、温もりを、この肌と目に焼きつけたい。
 この際、美女じゃなくたっていい。貧乳でもブスでもデブでもガリガリでも毛深くても男でも犬でも……性の快感をこの身体に刻み付けたい。
 こうなったら産婦人科医にでもなって人妻の――ってそんな学力もないんだよな。とほほ。
 何もかも、この「異性間性行為許可証」とかがあるせいだ!
 何でセックスするのに政府の許可がいるんだよ!
 俺はただセックスがしたいだけだ。子どもなぞはいらん。快楽に酔いたいだけだっ!
 くそっ、くそっ。あーイライラする! ついでにまたムラムラしてきた!
 大体「異性間性行為許可証」って長すぎるんだよ。「セックス免許」でいいんだよ。いちいち堅苦しくすんな。せめて「異性間」のくだりいらないだろ――

 ……あれ?
「異性間性行為許可証」ってなんで異性間ってついているんだ? 性行為なんて異性としかしないはずじゃないのか。
 ……いや、まさかな。
 でも、わざわざ「異性間」って表記しているあたり、公認している……ってことだよな?

 固唾を飲みこんだと同時に、また携帯電話が鳴りだす。
 電話の表示を見たらYの名前が記されていた。
 それはなんともいえぬほど丁度いいタイミングだった。
 俺は徐に電話を耳に当てた。
『もしもし? さっき途中で切れたけど電波が悪いのかな……。あ、そうそう。さっきの話の続きなんだけど、今夜うちで呑まない? 脱童貞への景気付けだ。お前も勿論やりたいよな?』
「……そうだな。今夜――いや、なるべく早めにヤりたいかな。待ってろよ、Y。シャワー浴びてから行くからな」
『ん? わかった。俺も今すぐやりたいし。これから俺も準備するわ。じゃあ、また後でな』


 この後、俺は童貞を卒業し、Yは男の処女を卒業したのはいうまでもないだろう。


以下、あとがき  
そもそも人は頭脳だけでは測れませんので悪しからず。

特筆することもないのですが、初めてR指定の小説書きました。

ちょっと自己嫌悪に陥ったのは内緒です。

テーマ:オリジナル小説 - ジャンル:小説・文学

  1. 2016/10/15(土) 18:54:21|
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